スタンドアップでチームの理解度を上げる!効果的な質問と「聴く力」の高め方
スタンドアップで「話しただけ」になっていませんか?
日々のスタンドアップミーティングで、チームメンバーから進捗や課題が共有されているものの、「本当に内容がチーム全体に伝わっているのか」「メンバーが抱える潜在的な情報が引き出せているのか」と疑問に感じたことはないでしょうか。単に情報を「話す」ことと、それがチーム全体の「理解」や「連携」に繋がることは異なります。
特にスタンドアップの運営に慣れていないリーダーにとって、限られた時間の中で効果的な情報共有を実現することは一つの壁かもしれません。メンバーからの報告を聞くだけでなく、そこからさらにチームのパフォーマンスを高めるためには、リーダーの「質問」のスキルと「聴く力」が非常に重要になります。
この記事では、スタンドアップにおいてなぜ質問と聴く力が大切なのか、そしてそれらをどのように実践すればチームの理解度を高め、より価値ある情報共有を実現できるのかについて、具体的な方法を解説します。
なぜスタンドアップで「質問」と「聴く力」が重要なのか?
スタンドアップの主な目的は、チームメンバーが互いの状況を素早く把握し、連携を強化することです。しかし、この目的達成は、メンバーが単に情報を報告するだけでは不十分な場合があります。リーダーや他のメンバーが効果的に「聴き」、必要に応じて「質問」することで、共有された情報の価値は飛躍的に高まります。
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表面的な報告に終わらせないため: メンバーからの報告は、必ずしも全ての背景情報やニュアンスを含んでいるとは限りません。適切な質問は、報告の裏にある状況や意図を掘り下げ、より正確な情報共有を可能にします。
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隠れた課題や障害を引き出すため: メンバー自身が「大したことではない」と思っていたり、あるいは報告をためらっていたりする潜在的な課題や障害(ブロッカー)があるかもしれません。リーダーが注意深く聴き、共感を持ちながら質問することで、こうした隠れた問題が顕在化し、早期解決に繋がります。
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メンバーの思考を深めるため: 質問は、報告者が自身の状況や課題について改めて考え、内省する機会を与えます。「なぜそうなっているのだろう?」「他にどんな選択肢があるだろう?」といった問いかけは、メンバーの自律的な問題解決能力を育むことにも繋がります。
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チームの相互理解を深めるため: リーダーが特定のメンバーに質問し、その応答をチーム全体で聴くプロセスは、他のメンバーにとっても学びや気づきの機会となります。異なる視点や状況の理解が進み、チーム全体の視野が広がります。
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心理的安全性を育むため: メンバーの話を真剣に聴き、建設的な質問をすることは、「自分の発言は価値がある」「安心して話せる」というチームの心理的安全性を高めます。これにより、メンバーはよりオープンに情報を共有するようになります。
効果的な「質問」の具体的な方法
スタンドアップの時間内に効果的な質問をするためには、いくつかのテクニックがあります。
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オープンクエスチョンを活用する: 「はい/いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンではなく、「どのように?」「なぜ?」「具体的には?」「どんな影響がありますか?」といったオープンクエスチョンを使います。これにより、メンバーはより詳細かつ自由に状況を説明するようになります。
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具体的に掘り下げる質問: 漠然とした報告があった場合、「そのタスクの具体的な進捗状況をもう少し詳しく教えていただけますか?」「Aさんが現在抱えているとおっしゃった障害について、どのような状況か説明いただけますか?」のように、焦点を絞って具体化を促します。
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確認・要約の質問: メンバーの発言内容をリーダーが要約し、「つまり、〇〇ということですね?」「私の理解では、△△が課題になっている、ということで合っていますか?」と確認することで、誤解を防ぎ、正確な情報をチームで共有できます。
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内省を促す質問: 課題に対して「その状況を改善するために、他に考えられるアプローチはありますか?」「この経験から、次に活かせそうな学びはありますか?」といった質問は、メンバー自身が解決策を考えたり、成長に繋げたりするきっかけになります。
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避けるべき質問: 尋問のように聞こえる質問、答えを誘導する質問、長すぎる質問、一度に複数のことを尋ねる質問は避けるべきです。メンバーが話しづらくなったり、混乱したりする原因となります。
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質問するタイミング: メンバーが報告を終えた直後や、共有内容に対してチーム内で疑問や不明点がありそうな場合に質問を投げかけます。ただし、全ての報告に対して質問する必要はありません。チーム全体の理解度向上や連携強化に役立つ場合に絞ることが重要です。
「聴く力」(傾聴)の高め方と実践
効果的な質問は、「聴く力」があってこそ活きてきます。「聴く力」とは単に耳で音を聞き取るだけでなく、相手の話に注意を向け、内容や感情を理解しようとする姿勢のことです。
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アクティブリスニングの基本: 話しているメンバーに体を向け、アイコンタクトを取りながら、相槌やうなずきを適度に挟みます。これにより、「あなたの話をしっかり聴いています」というメッセージを伝え、話し手が安心して話せる環境を作ります。
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オウム返しや言い換えで理解を示す: メンバーの発言内容の一部を繰り返したり、自分の言葉で言い換えたりすることで、「あなたがお話しになった〇〇という点は、△△ということですね」のように、自分が話を理解しようとしている姿勢を示します。
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感情に寄り添う: 言葉だけでなく、声のトーンや表情からメンバーの感情を察し、「それは大変でしたね」「うまくいって良かったですね」など、共感を示す言葉を添えます。感情への配慮は、心理的安全性を高め、より本音に近い共有を引き出すことにつながります。
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非言語コミュニケーションの活用: 自身の表情を和らげたり、リラックスした姿勢をとったりすることで、メンバーが話しやすい雰囲気を作ります。
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話の腰を折らない: メンバーが話している途中で遮らず、最後まで話に耳を傾けることが基本です。質問やコメントは、メンバーが話し終えるのを待ってから行います。
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先入観を持たずに聴く: 「この件はこうなっているはずだ」「この人はいつもこうだ」といった先入観や固定観念を一旦横に置き、話されている内容そのものに集中します。
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集中して聴くための準備: スタンドアップ中は他の作業を止め、スマートフォンやパソコンの通知をオフにするなど、話に集中できる環境を整えます。自分自身の心の状態も重要です。焦りやイライラといった感情があると、人の話を落ち着いて聴くことが難しくなります。深呼吸をするなど、心を落ち着けて臨むことも有効です。
質問と聴く力を組み合わせた実践例
具体的な状況で、質問と聴く力をどのように組み合わせるかを見てみましょう。
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例1:メンバーが「少し遅れています」と報告したとき
- 聴く力: うなずき、相槌を打ちながら、メンバーの表情を注意深く見る。
- 質問: 「何か予期せぬことがありましたか?」「その遅れは、次のタスクや他の誰かに影響はありますか?」「もし助けが必要なら、遠慮なく言ってくださいね。」
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例2:メンバーが「特に問題ありません」と短く報告したとき
- 聴く力: 報告を尊重しつつも、非言語で少し気遣いを示す表情をする。(ただし、尋問にならないように注意)
- 質問: 「順調とのこと、素晴らしいですね。具体的に、今日の進捗で特にチームと共有しておきたい点はありますか?」(より詳細な情報を引き出す)あるいは、「何か懸念していることはありませんか?」(隠れた不安がないか探る)
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例3:ある共有内容について、他のメンバーが少し困惑した表情をしているとき
- 聴く力: そのメンバーの表情に気づく。
- 質問: 報告したメンバーに直接尋ねる前に、「今の〇〇さんの報告について、何か質問や確認しておきたい点がある人はいますか?」とチーム全体に問いかける。
これらの例のように、聴く力で状況を把握し、適切なタイミングで適切な質問を投げかけることが、スタンドアップの質を高めます。
チーム全体で「聴き合う」文化を育むために
リーダーが質問と聴く力を実践するだけでなく、チーム全体で互いの話を真剣に聴き、必要に応じて質問し合う文化を育むことも大切です。
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リーダー自身が模範となる: リーダーが率先してメンバーの話を丁寧に聴き、オープンな質問をすることで、チームに良い影響を与えます。
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「聴くことの重要性」をチームに共有する: なぜ互いの話をよく聴くことがチームの成果に繋がるのかを、改めてチームに説明する機会を持つのも良いでしょう。
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フィードバックの機会を作る: スタンドアップの後に、短く「今の報告で気になったことや、もっと知りたいことはありますか?」といった時間を設けることで、双方向のコミュニケーションを促します。
まとめ
スタンドアップは、単なる進捗報告会ではありません。チームが情報を共有し、互いを理解し、連携を深めるための重要な機会です。リーダーが「質問」のスキルと「聴く力」を意識的に使うことで、メンバーからの報告の質を高め、隠れた課題を引き出し、チーム全体の相互理解と心理的安全性を向上させることができます。
これらのスキルは一朝一夕に身につくものではありませんが、日々のスタンドアップの中で意識し、実践を重ねることで、必ず向上していきます。今回ご紹介した具体的な方法を参考に、あなたのチームのスタンドアップをより効果的なものにしてください。