スタンドアップで今日達成すべき目標を明確にするには?具体的な共有ステップとヒント
スタンドアップで「今日の目標」を明確に:チームの生産性を高めるコミットメント共有術
スタンドアップミーティングは、チームの日々の進捗を確認し、連携を深めるために非常に有効な短い会議体です。しかし、「昨日やったこと」「今日やること」「障害」の3つをただ報告し合うだけで終わってしまい、チームの目標達成にどう繋がっているのかが見えにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
特に、スタンドアップの運営経験が浅いプロジェクトリーダーの方にとって、メンバーからより具体的で、チームの成果に貢献するような共有を引き出すことは一つの課題となり得ます。
この記事では、スタンドアップで単なる「やることリスト」の報告に留まらず、「今日達成すべき目標(コミットメント)」を明確に共有するための具体的なステップと、効果を高めるためのヒントをご紹介します。これにより、スタンドアップをチームの生産性向上に直結させるための実践的な方法を掴んでいただけるでしょう。
なぜスタンドアップで「今日の目標(コミットメント)」を共有するのか
スタンドアップで「今日やること」だけでなく、「今日達成したいこと」、つまり「今日の目標(コミットメント)」を共有することには、いくつかの重要な目的があります。
- 焦点を定める: チーム全体がその日最も注力すべきこと、あるいは個人がチームに貢献するために達成を目指すことを明確にすることで、日々の活動に集中力をもたらします。
- 透明性の向上: 各メンバーが何を達成しようとしているのかがチーム全体に共有されることで、相互理解が深まり、重複作業の回避や協力体制の構築に繋がります。
- コミットメント意識の醸成: 自分が今日何を達成するかを公に宣言することで、個人は目標達成に対する責任感をより強く持つことができます。
- 早期の課題発見: 目標達成に向けたコミットメントを共有する際に、その達成を妨げる可能性のある「障害(ブロッカー)」が発見されやすくなります。
単に「〇〇というタスクをやります」と報告するのと、「〇〇を今日中に完了させ、△△の機能をテストできる状態にします」のように具体的な目標や成果を含めて共有するのでは、その後の行動やチームへの影響が大きく変わってきます。
目標(コミットメント)を明確にするための具体的な共有ステップ
それでは、スタンドアップで「今日の目標(コミットメント)」を効果的に共有するための具体的なステップを見ていきましょう。これは、一般的なスタンドアップの進行に少し工夫を加えることで実現できます。
ステップ1:前日の成果(目標達成度)を簡潔に確認する
まず、通常のスタンドアップと同様に「昨日やったこと」を共有します。この際、もし前日のスタンドアップで何らかの目標(コミットメント)を立てていた場合は、それがどこまで達成できたのか、あるいは達成できなかった要因は何かを簡潔に共有すると良いでしょう。
- 「昨日は〇〇のタスクに取り組みました。目標としていた△△の状態までは到達できませんでしたが、原因は□□であることが分かりました。」
- 「昨日コミットした〇〇は無事完了しました。これにより、今日の△△作業に進むことができます。」
ステップ2:今日の「やること」に関連する目標(コミットメント)を設定・説明する
次に「今日やること」を共有します。ここで重要なのは、単にタスク名を挙げるだけでなく、「そのタスクを完了することで、今日中にどのような状態を目指すか」「どのような成果をチームにもたらすか」といった目標(コミットメント)を加えて共有することです。
- 単なる報告:「今日は〇〇機能の実装をやります。」
- 目標(コミットメント)を含めた共有:「今日は〇〇機能の実装を完了させ、単体テストが実行できる状態にします。これにより、明日の結合テストに進む準備が整います。」
- 別の例:「今日は□□に関する調査を行います。夕方までに調査結果をまとめ、チームに共有する準備を完了させます。これにより、次のステップの判断材料を提供できます。」
このように、「やること」+「それをやることで達成したい具体的な状態や成果」として共有することで、自分自身のその日の活動の焦点が定まり、チームメンバーもその人の活動がチーム全体の目標にどう貢献するのかを理解しやすくなります。
ステップ3:設定した目標をチーム全体に共有する
各メンバーが自身の「今日の目標(コミットメント)」を設定したら、それをチーム全体に分かりやすく共有します。これは、スタンドアップの進行の中で自然に行われるべきですが、単に聞き流すのではなく、チームメンバーがお互いの目標を意識できるよう、ファシリテーターが促すことも有効です。
共有された目標は、チーム全体の目標(スプリントゴールなど)とどのように関連しているのかを意識できると、より一体感が増します。
ステップ4:目標達成を妨げる障害(ブロッカー)を確認する
目標(コミットメント)を共有するプロセスの中で、その達成を阻む可能性のある「障害(ブロッカー)」が明らかになることがあります。「〇〇を達成したいのですが、そのためには△△さんのレビュー完了が必要です。」といった情報が共有されることで、チームとしてその障害を取り除くための協力や調整を早期に行うことができます。
ファシリテーターは、目標共有の際に「その目標達成に向けて、何か懸念事項や助けが必要なことはありますか?」といった問いかけをすることで、障害を引き出すサポートができます。
目標(コミットメント)を効果的に共有するためのヒント
目標(コミットメント)の共有をより効果的にするために、以下のヒントを参考にしてみてください。
- 具体的な言葉で目標を設定する: 曖昧な表現ではなく、「〇〇の状態にする」「△△を完了させる」のように、達成された状態が誰にでもわかるような具体的な言葉を選びましょう。
- 測定可能な目標を設定する(可能な場合): 可能な範囲で、「ファイル数」「完了したタスク数」「削減できた時間」など、数値で測定できる目標を含めると、達成度がより明確になります。
- Why(なぜその目標か)も簡潔に共有する: なぜその目標を今日達成することが重要なのか、それがチーム全体のどの目標に貢献するのかを付け加えることで、共有された内容への理解と納得感が深まります。
- 短い時間で簡潔に共有する工夫: スタンドアップのタイムボックスを守るため、目標共有も含めて一人あたりの発言時間を意識しましょう。詳細な議論は、スタンドアップ後に別途時間を設けるのが原則です。
- ファシリテーターの役割: ファシリテーターは、メンバーが単なるタスク報告に留まらず、目標(コミットメント)を意識した共有ができるように促す声かけが重要です。「今日、最も注力したいことは何ですか?」「そのタスクを完了すると、どうなりますか?」といった質問が有効です。
- チーム全体で目標達成意識を高める: 共有された目標をホワイトボードやタスク管理ツール上で可視化する、目標達成に対してポジティブなフィードバックをするなど、チーム全体で目標達成を応援する文化を育むことも効果的です。
まとめ
スタンドアップで「今日やること」だけでなく、「今日達成すべき目標(コミットメント)」を意識して共有することは、チームの日々の活動に明確な方向性をもたらし、生産性向上に繋がります。
今回ご紹介した具体的な共有ステップ(前日の成果確認、今日の目標設定・説明、チーム共有、障害確認)とヒントを参考に、ぜひあなたのチームのスタンドアップに目標共有の要素を取り入れてみてください。初めは難しく感じるかもしれませんが、継続的に実践することで、メンバー一人ひとりがより主体的にチームの目標達成に貢献しようという意識を持つようになり、スタンドアップが形骸化しない活きた習慣へと変わっていくはずです。
チームの状況に合わせてこれらの方法を調整しながら、より効果的なスタンドアップを目指しましょう。