スタンドアップで「今日やること」を明確に伝える共有の仕方
スタンドアップは、チームの状況を素早く共有し、連携を強化するための重要な日常的なプラクティスです。特に「今日やること」を明確に共有することは、チーム全体の方向性を合わせ、個々の作業が全体の目標にどう貢献するのかを理解するために不可欠です。
しかし、「今日やること」の共有が曖昧になり、「結局、誰が何をするのかよく分からない」「何を目指しているのか見えない」といった状況に陥ることも少なくありません。これは、情報の共有漏れや、チームメンバー間の認識のずれを引き起こし、結果として非効率や手戻りを招く可能性があります。
この記事では、スタンドアップで「今日やること」をチームメンバーに明確に伝えるための具体的な共有方法と、ファシリテーターとしてその質を高めるためのコツをご紹介します。
なぜ「今日やること」の共有が曖昧になるのか
「今日やること」の共有が曖昧になる背景には、いくつかの要因が考えられます。
- 抽象的な表現: 「〇〇の調査」「△△の修正」といった抽象的な表現で終わってしまい、具体的な作業内容や完了イメージが共有されない。
- 報告形式になっている: チーム全体の連携よりも、自分のタスクの進捗をマネージャーに報告するような形式になってしまっている。
- タスク管理ツールとの連携不足: 使用しているタスク管理ツールとスタンドアップでの共有内容が乖離している、あるいはツールを参照しながら話す習慣がない。
- 背景情報の不足: なぜそのタスクを行う必要があるのか、それがチームの目標にどう繋がるのかといった背景が共有されない。
これらの状況は、チームメンバーが互いの作業を理解し、必要に応じて協力し合う機会を奪ってしまいます。
「今日やること」を明確に共有するための具体的な方法
では、「今日やること」をより明確に伝えるためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
1. 具体的な「行動」を伝える
単にタスク名を挙げるだけでなく、「そのタスクのために具体的に何をするのか」という行動に焦点を当てて共有します。
- 良くない例: 「〇〇機能の調査」
- 良い例: 「〇〇機能の実現可能性について、A社APIのドキュメントを読んで仕様を洗い出し、△△さんと認識を合わせるミーティングを設定します」
このように、具体的なアクション、使用する情報源、連携する相手などを加えることで、聞き手は何が進行するのかをより鮮明にイメージできます。
2. 完了の「状態」や「成果」を意識する
「今日やること」を共有する際に、「今日を終えるまでにどういう状態になっているか」「どのような成果を目指すか」を可能な範囲で加えます。
- 良くない例: 「△△の修正」
- 良い例: 「ユーザーからの報告があった△△のバグについて、原因を特定し、修正箇所のコードレビュー依頼を出すことを目指します」
これにより、チームメンバーはタスクの完了基準を理解しやすくなり、進捗の確認やサポートの申し出もしやすくなります。
3. タスク管理ツールを「見ながら」話す
可能であれば、使用しているタスク管理ツール(Jira, Trello, Asanaなど)の画面を共有しながら話すことを習慣化します。
- ツール上のタスクカードを指し示しながら、自分がどのタスクについて話しているのかを明確にします。
- タスクの詳細、関連する情報、サブタスクなどを参照しながら話すことで、情報共有の質が高まります。
- 話す内容とツール上の情報が一致していることで、後から確認する際の混乱を防ぎます。
リモート環境であれば画面共有機能を積極的に活用し、対面であっても大きな画面に映し出すなどを検討します。
4. チームの目標や全体像と関連付ける
自身の「今日やること」が、チームの直近の目標やプロダクトの全体像にどう繋がるのかを意識して共有します。
- 「このタスクは、今週完了を目指している〇〇機能の基盤となる部分です」
- 「この修正は、ユーザーからのフィードバックに対応するもので、プロダクトの安定性向上に貢献します」
このように付け加えることで、個々の作業の意味づけが明確になり、チームメンバーのモチベーション向上や、異なるタスク間の関連性の理解に繋がります。
ファシリテーターが共有の質を高めるためのコツ
ファシリテーターは、チームメンバーがより明確に「今日やること」を共有できるようサポートする役割を担います。
- 具体性を引き出す質問: メンバーの共有内容が抽象的だと感じたら、「それは具体的に何をされる予定ですか?」「何をもって完了としますか?」といった、具体的な行動や完了状態を引き出す質問を投げかけます。
- 不明瞭な点へのフォローアップ: 聞き手側として理解できなかった点があれば、遠慮なく質問し、その場で曖昧さを解消します。
- ツール活用の推奨: ツールを見ながら話す習慣がないチームには、その有効性を説明し、実践を促します。
- 「誰に聞けば良いか」を明確にする: あるメンバーの「今日やること」に関連して、他のメンバーが情報を持っている場合や、協力が必要な場合、スタンドアップ中に「この件は〇〇さんに聞くと良いかもしれませんね」といった示唆を与えます。
- 肯定的なフィードバック: 具体的な共有ができたメンバーに対して、「今の説明は具体的にアクションが見えて、とても分かりやすかったです」といった肯定的なフィードバックを行うことで、チーム全体の意識を高めます。
チーム全体での習慣化
「今日やること」を明確に共有することは、一人の努力だけでなく、チーム全体の習慣として根付かせることが重要です。
- なぜ具体的な共有が必要なのか、その理由(認識合わせ、連携強化、手戻り防止など)をチームで改めて共有します。
- 新しい共有の仕方に慣れるまで、お互いにフィードバックし合える雰囲気を作ります。「今の共有で、ここが分かりやすかった・分かりにくかった」といった相互の学び合いを促します。
- ファシリテーターだけでなく、チームメンバー全員が「明確に話す」「明確に聞く」という意識を持つことが理想です。
まとめ
スタンドアップで「今日やること」を明確に共有することは、チームの透明性を高め、連携を円滑にし、結果として生産性の向上に繋がります。単なるタスク報告ではなく、具体的な「行動」や「完了状態」を意識し、タスク管理ツールと連携させ、必要に応じてチームの目標との関連性も共有することで、より質の高いコミュニケーションが可能になります。
ファシリテーターは、具体的な共有を促す質問やフォローアップを通じて、その質の向上をサポートします。そして、これらをチーム全体の習慣として根付かせる努力が、スタンドアップの効果を最大化するために不可欠です。今日から一つでも良いので、具体的な共有を意識してみてはいかがでしょうか。