スタンドアップで「話さない人」をなくすには?参加を促す声かけと工夫
スタンドアップで全員参加を実現するための声かけとファシリテーション術
日々のスタンドアップミーティングは、チーム内の情報共有を円滑にし、課題を早期に発見するための重要な時間です。しかし、「特定のメンバーしか話さない」「ほとんど発言しない人がいる」といった状況に直面し、全員参加が実現できていないと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一部のメンバーの発言に偏ってしまうと、チーム全体の状況が見えにくくなったり、発言しないメンバーの当事者意識が薄れてしまったりする可能性があります。全員が安心して発言できる場を作ることは、チームの透明性を高め、一体感を醸成するためにも不可欠です。
この記事では、スタンドアップで発言が少ないメンバーへの対応方法に焦点を当て、全員が積極的に参加するための具体的な声かけやファシリテーションのコツをご紹介します。
なぜ、スタンドアップで発言しないメンバーがいるのか?
メンバーがスタンドアップで積極的に発言しない背景には、いくつかの要因が考えられます。原因を理解することは、適切な対策を講じる第一歩となります。
- 話す機会がない、時間がない: 他のメンバーの発言が長すぎたり、全体の時間管理が不十分だったりすると、発言の機会を失ってしまいます。
- 話す内容がないと感じる: 日々の業務が定型的で、大きな進捗や課題がないと感じている場合、「特に話すことはない」となりがちです。スタンドアップの「昨日やったこと」「今日やること」「何か障害はあるか」という一般的なフレームワークが、自分の状況に合わないと感じている可能性もあります。
- 発言する勇気がない、苦手意識がある: チーム内の心理的安全性が低いと感じていたり、人前で話すことが苦手だったりする場合、たとえ話す内容があってもためらってしまうことがあります。自分の発言が否定されるかもしれない、的外れかもしれない、といった不安を抱えている可能性も考えられます。
- スタンドアップの目的を理解していない: スタンドアップが単なる「報告会」だと思っており、自身の発言がチームにどう貢献するのか、その意義を理解していない場合、積極的に情報共有しようという意識が働きにくいことがあります。
- 単に聞き役に回りたい: 特に問題がない場合や、他のメンバーからの情報収集を主な目的としている場合、自ら発言するよりも聞くことに徹したいと考えている可能性もあります。
これらの要因が複合的に絡み合っていることもあります。ファシリテーターとしては、これらの可能性を念頭に置き、それぞれのメンバーに合わせたアプローチを検討することが重要です。
全員参加を促すための基本的な考え方
具体的な声かけやテクニックに入る前に、全員が発言しやすい場を作るための土台となる考え方を確認しましょう。
- 心理的安全性の確保: 最も重要と言えるのが、チーム内の心理的安全性を高めることです。「何を言っても大丈夫」「失敗を正直に話しても非難されない」という安心感があるからこそ、メンバーはオープンに発言できるようになります。ファシリテーター自身が、メンバーの発言を否定せず、感謝や肯定的な反応を示すことから始めましょう。
- スタンドアップの目的の再確認: スタンドアップが何のために行われているのか(情報共有による連携強化、課題の早期発見と解決、チームの一体感醸成など)をチーム全体で共有し、改めて認識合わせを行います。単なる報告義務ではなく、チーム全員にとって価値のある時間であるという意識を醸成することが重要です。
- 「報告会」から「対話の場」へ: 一方的に報告する形式ではなく、メンバー同士が互いの状況に関心を持ち、必要に応じて短い質問やコメントを交わせるような「対話の場」としての意識を持つことも大切です。ファシリテーターがこの雰囲気作りをリードします。
発言を促す具体的な声かけとファシリテーション術
これらの基本的な考え方を踏まえ、明日から実践できる具体的な声かけやファシリテーションの工夫をご紹介します。
1. 「特に話すことはない」対策
「特になし」という回答は、そのまま受け流さずに、少し掘り下げてみることが有効です。
- 具体的な質問で状況を引き出す: 「〇〇さん、昨日は△△の作業をされていましたね。その後の進捗はいかがですか?」 「最近、何か気になる技術的な情報はありましたか?チームに共有したいことはありますか?」 「〇〇の件について、何か懸念していることはありますか?」 業務内容や役割に合わせて、より具体的な切り口で質問することで、話すきっかけを提供できます。
- 議題の幅を広げる提案: 「今日話すことは、昨日の進捗、今日の予定、障害になりそうなことの他に、チームに共有しておきたいことや最近気になったことでも構いませんよ。」 日々のタスク報告だけでなく、学び、気づき、簡単な相談事項など、共有できることの範囲が広いことを伝えます。「特に話すことはない」が、実際には少し気になっていることがある、というケースに対応できます。
2. 発言が少ないメンバーへの声かけ
無理に話させるのは逆効果ですが、優しく発言を促すことは重要です。
- 名指しで優しく促す: 「〇〇さん、何か共有事項はありますか?何か詰まっていることはありますか?」 「皆さん話し終わりましたが、〇〇さんからは何かありますか?」 あくまで「ありますか?」と問いかける形にし、「話してください」という強制的なトーンにならないよう配慮します。チームの雰囲気によっては、「もし何かあれば教えてくださいね」といったより柔らかい表現が良い場合もあります。
- 発言順の工夫: 毎回同じ順番ではなく、時には発言しやすい人から始めたり、逆に普段あまり話さない人を真ん中あたりに配置してみたりと、順番を工夫してみることも有効です。
- 短い発言でも肯定的に反応: たとえ一言二言の発言でも、「共有ありがとうございます」「そうですか、承知しました」など、肯定的に受け止める姿勢を示すことが重要です。発言して良かった、聞いてもらえた、という経験が、次回の発言へのハードルを下げます。
3. 場全体の雰囲気作りとその他の工夫
ファシリテーターは、声かけだけでなく、場全体の雰囲気をデザインする役割も担います。
- ファシリテーター自身がオープンに話す: ファシリテーターが自身の状況、課題、学びなどをオープンに話すことで、他のメンバーもそれに倣いやすくなります。
- メンバー間のインタラクションを促す: 誰かの発言に対して他のメンバーが自然と反応(短い質問、共感など)できるような雰囲気を作ります。必要であれば、「△△さん、今の〇〇さんの話について、何か補足やコメントはありますか?」のように軽く振ることもできます。
- タイムボックスを厳守する: ダラダラと長いスタンドアップは、参加意欲を削ぎます。一人あたりにかける時間の目安を共有し、タイムボックスを厳守することで、全員に発言の機会が行き渡るように意識します。
- スタンドアップ外でのフォロー: どうしてもスタンドアップで話しにくい内容や、個人的な課題については、スタンドアップ後に別途時間を取ることを提案するなど、柔軟に対応します。
- スタンドアップ自体のやり方を振り返る: 定期的なレトロスペクティブ(ふりかえり)の場で、「スタンドアップをもっと良くするにはどうすれば良いか」「発言しやすい雰囲気を作るには何が必要か」といったテーマで、チーム全体で話し合う機会を持つことも非常に効果的です。
まとめ
スタンドアップで全員が積極的に参加する場を作ることは、一朝一夕に実現するものではありません。ファシリテーターの粘り強い働きかけと、チーム全体の協力によって少しずつ改善されていきます。
「話さない人」がいる状況は、必ずしもそのメンバーが非協力的というわけではありません。多くの場合、場や進め方に何らかの改善の余地があるサインです。今回ご紹介した具体的な声かけやファシリテーションの工夫を参考に、チームの状況に合わせて一つずつ試してみてください。
全員が安心して声を上げられるスタンドアップは、チームのコミュニケーションを深め、生産性を向上させるための強力な土台となります。継続的に改善に取り組み、チームにとって最も効果的な形を見つけていきましょう。