異なる職種が集まるチームのスタンドアップ!共通理解と連携を深める秘訣
チームでスタンドアップを導入・運営される中で、エンジニア、デザイナー、マーケター、営業など、異なる職種や専門性を持つメンバーが集まるチームを担当されている方もいらっしゃるかと思います。このような多様なバックグラウンドを持つチームでのスタンドアップは、それぞれが異なる視点や用語を用いるため、情報の共有や相互理解に難しさを感じることがあります。
この記事では、異なる職種が集まるチームにおいて、どのようにすればスタンドアップを通じて共通理解を深め、チーム全体の連携を強化できるのか、そのための具体的な秘訣をご紹介します。スタンドアップの運営経験が浅いプロジェクトリーダーの方にも実践しやすい内容を目指します。
異なる職種が集まるチームでスタンドアップが難しい理由
まず、なぜ異職種チームでのスタンドアップに工夫が必要となるのか、その主な理由を理解しておきましょう。
- 専門用語の壁: 各分野には固有の専門用語や略語があり、他の職種のメンバーには理解できない場合があります。
- 業務内容や視点の違い: 担当業務が大きく異なるため、話している内容が他のメンバーにとって自分事として捉えにくいことがあります。進捗報告一つとっても、何を重要な情報と捉えるかが異なります。
- 目標や成果に対する捉え方の違い: 短期的な成果を重視する職種もあれば、長期的な視点や品質を重視する職種もあります。これにより、共有される内容の優先順位や重要度が異なって感じられることがあります。
- 進捗の連鎖が見えにくい: ある職種の進捗が、別の職種の業務にどう影響するのか、その依存関係や繋がりが見えにくいことがあります。
これらの要因が複合的に作用することで、スタンドアップが単なる個別の報告会になってしまったり、一部のメンバーにとっては退屈な時間になってしまったりする可能性があります。
共通理解と連携を深めるための秘訣
異職種チームで効果的なスタンドアップを実現するためには、いくつかの工夫が必要です。ここでは、特に重要な秘訣をいくつかご紹介します。
1. スタンドアップの「目的」を再確認し、共通認識を持つ
チーム全員で「なぜ私たちは毎日集まって話すのか」という目的を明確にすることが最初のステップです。単に個人のタスク報告をする場ではなく、「チームとして共通の目標達成のために、お互いの状況を共有し、連携を円滑にするための時間である」という点を強調します。
特に異職種チームでは、個々の専門性がチーム全体のゴールにどう貢献するのか、その繋がりが見えにくいことがあります。スタンドアップの中で、個人の進捗がチーム全体の目標や、他のメンバーの業務にどう影響するかを意識的に話すように促しましょう。
2. 専門用語を使わない、または丁寧に説明する習慣をつける
チームの共通言語を意識的に作り上げることが重要です。
- ルール化: スタンドアップ中は、可能な限り専門用語を使わない、または必ず簡単な言葉で補足説明を加えるというルールをチームで合意します。
- 問いかけ: ファシリテーターは、専門用語が出た場合に「それはどういう意味ですか?」と問いかけ、他のメンバーも理解できるように促します。
- 相互学習: お互いの業務で使われる基本的な用語を学び合う時間を持つのも有効です。
これにより、誰もが安心して発言し、内容を理解できるようになります。
3. 「何を」「なぜ」に加え、「それがチームにどう影響するか」を共有する
従来のスタンドアップでよく共有される「昨日やったこと」「今日やること」「障害」に加え、その内容が「チーム全体にどう影響するか」「他のメンバーの業務にどう関連するか」という視点を加えるように促します。
- 例:
- 「(エンジニア)新機能の開発が完了しました。これは、今後デザイナーの方がUI最終調整を進める上で必要になります。」
- 「(デザイナー)新しいLPのデザイン案ができました。マーケターの方には、このデザイン案を元にABテストの準備をお願いすることになります。」
- 「(マーケター)広告キャンペーンのデータ分析が終わり、ある層への訴求が弱いことが分かりました。これは、今後のコンテンツ企画や、エンジニアの方の改修優先順位に影響するかもしれません。」
このように、自分の業務が他のメンバーにどう繋がるかを意識することで、チーム全体の連携が見えやすくなります。
4. 異なる視点への関心を促し、質問しやすい雰囲気を作る
お互いの仕事内容や視点に対する理解を深めるために、積極的に質問や対話を促します。
- ファシリテーターは、発言に対して「それは〇〇さん(別の職種)の業務とどう関連しますか?」など、意図的に繋がりを意識させる質問を投げかけることができます。
- 「何か質問はありますか?」という問いかけだけでなく、「今の〇〇さんの話、△△さんの視点から見て何か気づきや質問はありますか?」のように、特定のメンバーに緩やかに問いかけることも有効です(ただし、強制にならないように配慮が必要です)。
- 短い時間でも、他のメンバーが話した内容について簡単な感想や共感を伝えるように促すことで、心理的安全性が高まります。
5. チーム全体の「可視化ツール」を活用する
プロジェクト管理ツール、カンバンボード、共有ドキュメントなどを活用し、チーム全体のタスク、進捗、依存関係を視覚的に把握できるようにします。
スタンドアップ中にこれらのツールを参照しながら話すことで、抽象的な報告が具体的な状況と紐づき、異なる職種のメンバーも状況を理解しやすくなります。特に、あるタスクが完了しないと別のタスクが進められないといった依存関係を明確にすることが、異職種間の連携において非常に重要です。
リーダー(ファシリテーター)の重要な役割
異職種チームのスタンドアップでは、リーダーのファシリテーションスキルが特に重要になります。
- 共通言語への変換を促す: 専門用語が出た際に、全員が理解できるように促したり、必要に応じてリーダーが簡単な言葉で言い換えたりします。
- 視点の橋渡し: 異なる職種のメンバーの発言内容を結びつけ、「これはつまり、〇〇さん(別の職種)の△△という状況に繋がるのですね」といった形で、チーム全体の文脈の中で位置づけを明確にします。
- 対話と質問の促進: 一方的な報告だけでなく、短い対話や質問が生まれるように、雰囲気作りや声かけを行います。
- 時間管理と焦点を維持: 多様な話が出やすい異職種チームだからこそ、決められた時間内に、チーム全体の連携に必要な情報共有に焦点を当てて進行することが重要です。話が脱線しそうな場合は、「その件はスタンドアップの後で詳しく話しましょう」などと促します。
まとめ
異なる職種が集まるチームでのスタンドアップは、専門性の違いからコミュニケーションに難しさを伴うことがあります。しかし、スタンドアップの目的をチーム全体で共有し、共通言語を意識し、情報の共有に「チーム全体への影響」という視点を加えることで、相互理解を深め、強力な連携を生み出す場にすることができます。
リーダーは、ファシリテーターとしてこれらの工夫をチームに促し、異なる視点を持つメンバー間の橋渡し役となることが期待されます。焦らず、チームの特性に合わせて少しずつ改善を重ねていくことが成功の鍵となります。ぜひ、これらの秘訣を参考に、チームに最適なスタンドアップの形を見つけてください。