兼務者がいるチームのスタンドアップを成功させるには?効果的な情報共有とファシリテーションのヒント
スタンドアップは、チームの状況を共有し、連携を強化するために非常に有効なプラクティスです。しかし、チームメンバーが複数のプロジェクトを兼務している場合、スタンドアップでの情報共有やファシリテーションに難しさを感じることがあります。
この記事では、兼務者がいるチームでスタンドアップを成功させるための、効果的な情報共有の促し方とファシリテーションのヒントをご紹介します。スタンドアップの運営経験が浅いプロジェクトリーダーの方にとって、具体的な実践の参考になれば幸いです。
兼務者がいるチームのスタンドアップで生じやすい課題
複数のプロジェクトを兼務しているメンバーは、それぞれのプロジェクトで異なるタスクや状況を抱えています。これにより、スタンドアップで次のような課題が生じやすくなります。
- 情報共有の焦点がぼやける: どのプロジェクトに関する情報を、どの程度共有すべきか判断が難しくなる。
- 関連性の低い情報が増える: チーム全体にとって重要でない、特定のプロジェクトの詳細に時間が割かれてしまう。
- 共有される情報量が過多または過少になる: 全てのプロジェクトの状況を伝えようとして時間が足りなくなったり、逆に伝えるべき重要な情報が抜け落ちたりする。
- 参加意識の低下: 自分の主なプロジェクト以外の情報は自分には関係ないと感じ、発言が減る、または傾聴の意識が薄れる。
- ファシリテーションの難しさ: 発言の交通整理や、重要な情報の引き出し、関連性の整理が複雑になる。
これらの課題に対処するためには、兼務者の状況を理解し、スタンドアップの目的を再確認した上で、いくつかの工夫を導入することが有効です。
効果的な情報共有を促すための工夫
兼務者を含むチームで効果的な情報共有を行うためには、共有する情報の「質」を高め、チームにとって必要な情報がスムーズに出てくるような工夫が必要です。
1. 共有の焦点を明確にする
スタンドアップで共有すべき情報は、基本的に「チームの共通目標達成に向けた進捗、障害、今日の計画」に焦点を当てるべきです。兼務者に対しても、特に以下の点を意識して共有を依頼すると良いでしょう。
- 担当プロジェクトのうち、このチームの目標達成に最も関連性の高い部分の進捗
- そのプロジェクトで発生しており、このチームの進捗に影響を与える可能性のある障害やリスク
- 今日、このチームのために具体的に何を計画しているか
必要に応じて、スタンドアップの冒頭で、その日のチームの全体的な焦点や優先事項を再確認すると、メンバーは共有すべき情報の範囲を判断しやすくなります。
2. 共有項目を事前にチームで合意する
兼務者が何を発表すべきか迷わないように、チームで共有する項目や粒度について事前に話し合い、合意しておくことが有効です。例えば、
- (このチームのプロジェクトにおける)完了したタスク
- (このチームのプロジェクトにおける)今日取り組むタスク
- (全ての担当プロジェクトにおいて)このチームの進捗を妨げうる障害や懸念
といった形式で共有することを決めることができます。これにより、兼務者は複数のプロジェクトの中から、このチームにとって relevant な情報を取捨選択しやすくなります。
3. 非同期での情報共有と組み合わせる
スタンドアップで全ての詳細を共有することは非効率です。兼務者が担当する他のプロジェクトに関する詳細な情報や日々の細かい進捗は、チャットツールやプロジェクト管理ツールのステータスアップデートなど、非同期での共有を活用することを推奨します。スタンドアップでは、その中で「このチームにとって特に知っておくべきこと」や「助けが必要なこと」に絞って話すように促します。
ファシリテーションのヒント
ファシリテーターであるプロジェクトリーダーの役割は、兼務者がいるチームのスタンドアップにおいて特に重要になります。
1. 傾聴と適切な質問
兼務者の発言を注意深く傾聴し、必要であれば補足的な質問を投げかけます。
- 発言の意図や、チームへの関連性が不明確な場合は、「それは私たちの〇〇という目標にどう影響しますか?」や「その状況は、△△さんに何か影響を与えそうですか?」など、チームの文脈に引き寄せる質問をします。
- 障害や懸念について言及があった場合は、それがこのチームにとってどの程度の緊急度や影響度を持つのかを確認する質問をします。「その問題は、今日の私たちの計画に何か支障をきたしますか?」など。
2. 情報の要約と整理
兼務者の発言が複数のプロジェクトにまたがる場合、ファシリテーターが適宜、このチームにとって重要な情報を要約し、整理してチーム全体に確認を求めると、他のメンバーも状況を把握しやすくなります。「〇〇さんの話では、△△プロジェクトの状況が、私たちの今後の✕✕作業に影響する可能性がある、という理解で合っていますか?」のように、簡潔にまとめて確認することで、情報の共有漏れや誤解を防ぎます。
3. チームの共通認識を育む
兼務者の状況や抱えている負荷について、チーム全体で理解を深める機会を設けることも重要です。定期的に、兼務者の担当範囲や他のプロジェクトとの関わりについて、スタンドアップ以外の場で(例えば、振り返りや別途短時間の情報共有会で)話し合う時間を設けることで、チーム全体の協力体制を強化できます。
4. 心理的安全性の確保
兼務していることで、特定のプロジェクトの状況をチームに共有しにくいと感じるメンバーもいるかもしれません。ファシリテーターは、どのような情報でも安心して共有できる雰囲気を作ることが重要です。「他のプロジェクトの状況でも、このチームに関係することなら遠慮なく共有してください」といったメッセージを伝え、共有された情報に対して非難ではなく、建設的な関心と協力を示す姿勢をチーム全体で保つように促します。
まとめ
兼務者がいるチームのスタンドアップは、情報共有の複雑さが増すという特徴があります。しかし、共有する情報の焦点を明確にし、非同期ツールとの連携を上手く活用することで、スタンドアップの時間を有効に使うことができます。
また、ファシリテーターが傾聴の姿勢を持ち、適切な質問で情報を引き出し、チーム全体で情報を整理・確認していくことが、スタンドアップの質を高める鍵となります。兼務者の状況をチーム全体で理解し、心理的に安全な環境を整えることも、効果的なスタンドアップには不可欠です。
これらのヒントが、兼務者がいるチームでのスタンドアップ運営に役立ち、チームのコミュニケーションと生産性向上に繋がることを願っています。